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エリック・クラプトンという人の孤独が、こちらにもいつの間にか伝わってくるような1日だったよ。


 ロンドン日記 8 yamaken 6月21日(土)10時39分32秒

 ぼくが東京をあけている間に、『甘い密』と『ルーディーズ・クラブ』と『MACLIFE』
の連載第1回が出たんだね。
 どれも、今回はみんなのほうが先 に見るんだよ。ぼくは、まだでき上がったのは手
にしてないから。きっと『アップル・ジャム』の装丁もできあがってるんだろうな。
 さて、今こちらは21日の午前2時頃だ。たった今、取材を終了して、夕 食をすま
せて部屋に戻ったところ。今日はね、トンカツ定食を食べてしまったぜ。ポテトサラ
ダ付。あー、うまかった。
 今日というか昨日(20日)は、サーリー州のリップリー村に、エリック・クラプ
トンの生家を探しにいった。日本は台風みたいだけど、ロンドンは小雨が降っていて
ね。1時間ぐらい南西の方向へモーターウェイを走った。モーターウェイというのは
日本でいう高速道路のことだけど、無料なんだ。まず、少年時代のクラプトンが最初
にアコースティック・ギターを買ったベル楽器店にいったんだ。
 けっこう大きなショップで、今はホーナーの直営店になってるんだ。スネアのヘッ
ドに「ぼくに最初にギターを教えてくれたベル楽器店に感謝をこめて。エリック・ク
ラプトン」というサインが入ったやつが、無造作に置いてあった。
 ぼくはここで、ホーナーのブルースハープの日本に入ってないタイプのものを2本
(DキーとCキー)と、ピックを買った。そのピックで弾くとさ、なんかギターがうま
くなったような気がするんじゃないかと思ってね。
 それから、結局クラプトンが退学処分になってしまった美術学校へ行き、リップ
リー村に生家を探しにいった。これが、予想以上にたいへんだった。聞く人によっ
て、みんな少しずつ違うことを言うんだよね。郵便局へも行ったんだけど、そういう
ことは法律で禁じられているから教えられないって返事だし。
 でも、とうとう突き止めたんだよ。
 広い草原の端にぽつんとある寂しい感じの家で、いかにもエリック・クラプトンら
しい家だった。
 ところで、クラプトンは生まれながらにして母親に捨てられた人なんだ。そのお母
さんがこの村に住んでいるという話を村人の一人に聞いて、日本でいう104に電話
して聞いてみたんだ。こっちじゃ、192なんだけどさ。パトリシア・マクドナルド
という名前だけはわかってたから。で、電話がつながり、彼女と話せたんだ。その後
どうなったかは、NAVIを読んでくれ!
 それからさ、エリック・クラプトンがクリームで成功した後買った、ハートウッ
ド・イーデスという広大な屋敷があるんだよ。ジョージ・ハリスンの妻だったパティ
と密会をつづけた家であり、長い隠頓生活を送った場所でもある。彼は今でもロンド
ンに戻ってくるとここで生活してるんだよね。
 でも、住所もアバウトな所在地もはっきりしない。ロンドンで集めた資料を片っぱ
しからあたっても、住所はわからなかったんだ。こいつにね、リップリー村の人や、
国道沿いのサンドイッチハウスのおばさんや、いろんな人に話を聞きながらとうとう
辿り着くことができたんだ。
 もう、夕方で、雨が降ってたけど。エリック・クラプトンという人の孤独が、こち
らにもいつの間にか伝わってくるような1日だったよ。
 さて、明日というか、朝になったら最後の取材だ。
 山川健一

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